円安・インフレの時に絶対にやってはいけないこと
今回のテーマは円安・インフレの今、絶対にしてはいけないこと5選です。
2022年の投資環境を振り返る上で象徴的なことが2つありました。一つは円安です。一時32年ぶりの水準まで進みましたね。かつての1ドル150円の水準をご存知ない方がたくさんいらっしゃるはずです。なにせ32年ぶりでしたからね。1ドル150円の水準からはだいぶ今は落ち着いてきましたとはいえ、2021年末を比較すると円は大きく安いです。
もう一つはインフレです。毎月のように前年同月比で高い数値を示した米国のCPIがわかりやすい例です。日本でもインフレを実感することが今までになく多かったのではないでしょうか?
身近な例では、エネルギー価格の上昇による光熱費の上昇などですね。多くの食品などもこの1年で上昇を実感することになりました。それでも私達はお金と上手に付き合っていかなければいけません。
そのためにやるべきことや、やらない方がいいことが常にあります。今回は円安インフレの今やらない方がいいことをご紹介します。
①大きな買い物の先延ばし
資産形成において無駄遣いは言うまでもなく禁物です。とはいえ、お金を全く使わない生活も容易ではないでしょう。買い物とは一生のお付き合いです。
インフレ時の買い物は判断に迷うことが多いと思います。今のうちやっておかないと安く買えなくなってしまうという心理が働きがちです。
しかし、購入してから価格が下がったら損をしたような気分になります。でも買いたいと思っていた商品が値上がりすると非常に悔しいですね。いつ買えばいいのかいつも悩むでしょう。
将来、物価がどうなるのかを正確に予測することは誰にもできません。とはいえ他の要素により価格の変化が一時的なものなのか、あるいはこれからも続くものなのかを考えることはある程度可能だと思います。
一つ例を見てみましょう。国産の普通乗用車の価格の推移です。データは総務省統計局が実施している小売物価統計調査の結果を引用しました。車種は明らかにされていませんが、全国で同じ品目について価格調査をした結果です。
4年前、2年前と比較するとずいぶん価格が上昇しています。この期間で、おそらく様々な部品の価格が上昇していますし、人件費も上昇しているでしょう。それらのコスト上昇が価格に転嫁されていると思われます。
でも自家用車を持っていないから私には関係がないと思う方がいらっしゃるかもしれません。ではもっと身近なものの価格変化を見てみましょう。東京都における全自動洗濯機の価格推移です。
こちらも2022年の夏以降、大きく価格が上昇しています。理由はいくつか考えられ、半導体不足による供給不足もその一つです。
中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンによる製造遅れも理由でしょう。自動車や洗濯機のような耐久消費財は頻繁に買い換えないものです。ですから、多くの人は必要に迫られたときに初めて価格を意識すると思います。
しかしそれぞれの品目の価格の推移を見ると、変化が見えます。調査結果は買い替えを検討しているならば、早めの買い替えの方がよさそうと言っています。
必要以上に開会を先延ばしすると残念なことになるものがあることを知っておきたいですね。そもそも理由はともあれ、インフラがあってしかるべきものです。物価が上がらなければ我々が受け取る賃金も上昇しません。日本では物価が上がることが長い間敬遠されていただけなのです。インフレと上手に付き合うこともお金とうまく付き合う手段の一つです。
②外貨預金
外貨預金はその名の通り日本以外の外国の通貨で預金を行うことです。ご存知の通り、日本円での預金金利は雀の涙にすらならない水準ですね。
一方外貨預金は金融機関によっては非常に魅力的な金利水準を提供しています。2021年は米国の金利が急騰しました。他国も概ね金利が上昇しました。それに伴い、外貨預金の金利が魅力的に思えた方も少なくないようです。
しかし、これから申し上げる理由により外貨預金は今やるべきことではないと考えています。理由をお話しましょう。
一番大きな理由は価値が為替レートに左右されること、外貨の価格為替相場は日々変動しますね。外貨預金の価値を左右するのはその金利だけではありません。為替レートによっても価値が変わる金融商品です。
むしろその為替レートの方が変化が激しいです。私達が寝てる間にも変化しています。円安と言われる今外貨預金して円高が進んだときのことを想定してみてください。外貨建てでは増えているかもしれませんが、円建てでは損するかもしれません。
一方金利は満期になるまで変わりません。外貨建てでのリターンが固定されてしまっていることも実はリスクなのです。
次は資産運用全般に言えるコストのことです。運用商品を選ぶときはコストにも着目する必要があるとしばしば申し上げています。
外貨預金では2回のタイミングでコストが発生します円から外貨への預け入れと、外貨から円への払い戻しです。大手都市銀行でも5日当たり片道25銭から1円の為替手数料が必要です。
仮に為替手数料を片道25銭だとしましょう。1000ドル外貨預金して満期時に払い戻しすることにします。そうするとそれぞれのタイミングで250円のコストが発生します。合計500円のコストが必要です。仮に金利が2%で、期間が1年だとしましょう。1年後に10ドルの金利が付与されますが、コストの500円を差し引くと発表された金利はそれほど大きくないですね。
他に念のために外貨預金について知っておいた方がいいことをお話します。為替レートとは関係ありませんがぜひ知っておいて欲しいです。
一つ目は外貨預金は預金保険制度の対象にならないことです。預金保険は、万一預入先の銀行が破綻した場合、預金者の預金などを保護するための保険制度です。円建ての預金は1金融機関ごとに合算して元本1000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
1000万円を超える部分は破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われるようになっています。しかし、外貨預金はこの制度の対象外です。預けた外貨が手元に戻ってこない可能性があります。銀行の破綻は稀ではありますが万一のことを考慮しておきましょう。
もう一つは課税関係です。外貨預金の金利は利子所得で所得税が源泉徴収されるので問題ありません。注意が必要なのは為替差益です。預金したときより円安で払い戻した場合、為替レートの違いによる利益が出ますね。これを為替差益といいます。
為替差益は税法上で雑所得として扱われます。給与水準や雑所得の金額によっては確定申告が必要になる場合があることを知っておきましょう。
③外貨建て生命保険への加入
外貨建て生命保険は保険料を外貨で払い込みます。満期保険金や解約返戻金、死亡保険金なども外貨で受け取る保険商品です。終身保険、個人年金保険、養老保険があります。
外貨の種類は米ドル豪ドルを選べるものが多く、中にはユーロを選択できる商品もあります。保険会社の保険料は、あらかじめ運用による一定の運用収益を見込んでいます。保険料は運用収益を割り引いて設定します。この割引率を予定利率といいます。
運用収益が高ければ高いほど予定利率を高くすることができます。ですから、運用収益が高ければ保険料は安くなります。反対に運用収益が低いほど予定利率は低く、保険料は高くなります。
他国の金利が上昇してきた2022年は外貨建て生命保険の予定利率が上昇しました。ですから、外貨建て生命保険の保険料が魅力的に見えてきたかもしれません。
とはいえ、外貨預金と同様に外貨建ての保険も為替変動の影響を受けます。また、為替手数料が発生するのも外貨預金と同様です。さらに保険特有の費用が発生します。生命保険会社も商売ですから、販売した商品から収益を得る必要があるからです。
また、このような費用が自分の保険料のどのぐらいを占めるのかはなかなかわかりにくいです。商品性を理解して契約するならば構いません。
しかし、よく理解しないで契約する人が後を絶たないようです。消費生活センター等に寄せられる相談件数が多いのも外貨建て生命保険の特徴です。払い込んだ保険料は生命保険料控除の対象になるという利点はあります。
それを謳い文句に契約を促されることもあるでしょう。しかし、死亡保障を必要とするならば、もっとシンプルな円建ての保険でカバーできます。外貨建て商品では背伸びは禁物です。
④為替ヘッジあり商品の大量購入
2022年に大きく円安になった反動で2023年は円高を予想する人がいるようです。円安時に買ってほっておくと、円高時には含み損になる金融商品がたくさんあります。そのような場合に為替ヘッジあり商品を検討することがあるかもしれません。
ヘッジとは投資対象の価格変動に伴うリスクを低減することです。為替ヘッジといえば合わせ変動のリスクを低減することになります。海外資産へ投資する投資信託やETFには投資の対象が同じでも2種類存在していることがあります。
為替ヘッジありと為替ヘッジなしです。この二つはプライスの動きが為替相場の影響を受けているかどうかの違いです。そのため換金時に購入したときよりも円高になった場合損失が発生します。この損失を為替差損といいます。
この為替差損リスクを限定的にする行為が為替ヘッジです。為替ヘッジは為替先物予約取引で実施します。将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておく取引です。その際に対象通貨の金利差分の為替ヘッジコストが発生することがあります。
この費用は投資家が直接的に支払うものではありません。信託財産から引かれるので商品の基準価額等にマイナスの影響を与えます。為替ヘッジのコストについても触れておきましょう。
日本の投資家が米ドルの為替の影響を低減するために為替設置を行う場合を想定します。この場合、米ドルと円の金利差が、為替ヘッジコストとなります。円は米ドルよりも短期金利が低いからです。為替ヘッジコストが高いとその分、為替ヘッジ後の利回りは低くなります。為替ヘッジコストが低いと逆に高い利回りを享受しやすくなります。
2022年は米国の金利が上昇しています。ですからヘッジのコストもかつてと比較して上昇していると考えるのが自然です。為替ヘッジの有無について簡単にまとめると短い期間の運用ならば為替ヘッジの有無を意識すべきかもしれません。
為替変動が基準価格等に与える影響を制御することは可能です。しかし、為替ヘッジ自体が資産を大きく増やす役目は果たしません。むしろ長期的な為替ヘッジはそのポストは無視できなくなります。
ですから毎月コツコツ、S&P500連動商品を買うような投資においては為替ヘッジの有無を意識しなくていいと考えることもできます。短期的な為替変動に気持ちを左右されて為替ヘッジあり商品を大規模に購入するのは避けた方がいいでしょう。
⑤投資をやめること
おすすめしているS&P500連動商品への投資は誰もができて効率的です。とはいえS&P500といえども、2022年は辛抱が必要な1年でした。しかし、S&P500を違う角度から眺めると風景が違います。
私達日本人は円をベースに資産を把握しているでしょう。ですからS&P500を円で眺めてみましょう。S&P500に投資することができる東証に上場するETFで確認します。IシェアーズS&P500米国株ETF銘柄コード1655です。信託報酬率が低く、売買高も多いので取引しやすい東証上場ETFです。
一連のチャートで見てみると下げていません。緩やかに右肩上がりになっています。円安がこの銘柄に対してはプラス寄与しているのです。
またドル建てであっても1年ではなく20年で見ると見え方が全く違います。もちろん上げ下げはありますが、直近1年の下げがものすごく目立つだけです。長期で眺めれば右肩上がりに推移しているのが、S&P500です。これが私達に語っているのは、投資はやめちゃ駄目だよということです。
円安・インフレだと嫌でも耳に入っています。日々のニュースは投資環境が良くないことを伝えることもあります。含み損を抱えた状態でそのようなニュースを見聞きすると、既に購入したものを全部売って終わりにしたいと考えるかもしれません。それこそがやってはいけないことです。
お金は長期的に見て、右肩上がりになる山に置いておくのが資産形成の基本です。だからこそ、S&P500連動商品への投資をおすすめします。円安だインフレだと言われても心は変えずにコツコツ続けましょう。投資こそインフレのメリットを享受できる構造であることを改めて思い出してください。
これまでに挙げた5つに関して共通することがあります。可能な限り対面で取引しないということです。買い物は実際に物を見たいとか価格交渉したいという要素もあります。大きさを確かめたりとか自動車であれば試乗したいという要望もあるでしょう。ですから店頭での取引を全部否定するわけではありません。
しかし、金融商品に関しては同じような性格のものでも対面取引すると高くつくことが多いです。外貨預金を例にします。三井住友銀行の外貨預金時の為替手数料です。どの通貨もオンライン取引以外では為替手数料が2倍ですね。これは他の銀行でも同様です。
同じ目的を果たすための費用が人を介する場合、そうではない場合で違うということです。検討で取り扱う人、電話で取り扱う人はボランティアでは当然ありません。ですから全部自分で何とかするオンライン取引とコストが違うのは当たり前です。
外貨建て生命保険は告知義務等もあり、オンラインで契約することが難しい商品です。ですからこれも人を介する取引になりますね。投資信託や株式の取引も金融機関の窓口やコールセンターで取引することが可能です。しかし当然ながら窓口での取引に発生する手数料はオンラインより高いです。
誰かに説明を受けなければ取引できないものを避けましょう。そうすれば不必要にお金を使う必要がないということです。言い換えると説明を受けなければ理解できないものを取引しなければいいのです。結果として、円安、インフレの今やらない方がいいことを避けることが可能になります。
人間は弱い存在です。人にすすめられると、ノーと言えない人は少なくありません。結果として取引しなくてもいいものを取引してしまうことは間々あると思うのです。ですから自分から積極的に近寄らないようにすることが自分を守ることになります。自分で理解した上で、人を介してしか取引できないものが必要になったら、他に手段がないのであれば、人を介して取引する選択をそのとき初めてすればいいのです。
まとめ
円安インフレの今、私達がお金と上手に付き合うためにやらない方がいいことを5つお話しました。
一つ目は大きな買い物先延ばしです。祝物価の推移を見ると徐々に値上がりしているものが見受けられます。買い替えを検討しているならば、早めの買い替えの方がよさそうです。必要以上に買い替えを先延ばしすると残念なことになるものがあることを知っておきましょう。
二つ目は外貨預金です。為替手数料などのコストが決して低くないことが理由です。また、預金保険制度の対象外であることや課税関係も考慮する必要があります。
三つ目は外貨建て生命保険です。外貨預金では為替手数料だけではなく保険には見えない費用が多いです。死亡保障が欲しければ、外貨建てではなく、円建てのシンプルなものの方がいいです。
四つ目は為替ヘッジあり商品の大量購入です。為替ヘッジは為替変動によるリスクを低減するものですが、それにはコストが発生します。長期投資ではそのコストが見過ごせない存在になります。コツコツ長期投資では為替ヘッジを意識しなくていいと考えます。
五つ目は投資をやめることです。円安は海外資産の投資で決してマイナスになっていません。またS&P500は長期にわたって右肩上がりで推移している株価指数です。そのような対象への投資をやめてしまうのは勿体ないです。さらに全体を通して言えば自分で理解できるものを可能な限り人を介さずに取引することが大事です。
人を介するということは、そのための費用を求められることが多いです。またついついノーと言えなくなってしまいがちです。そのような状況を避けるために必要な行動です。
以上、最後まで読んで頂きましてありがとうございました。