米国株の損切りすべきタイミング
今回のテーマは米国株の損切りすべきタイミング7選です。いきなりですが質問です。皆さんは何のために株式投資に取り組まれていますか?
もちろん利益を出し、資産を増やすためですよね。そのためには、将来確実に資産を増やす、良い株、良い指数を購入することが大事。このことは、これまで繰り返しお伝えしてきました。
実は株式投資においてもう一つ重要なポイントがあります。これは資産を増やす投資家さんは必ず実行していることです。それはつまり損失をうまくコントロールすることです。
購入した株価が必ずしも伸び続けるとは限りません。買った瞬間から下落する、または買ったときは上昇していたが最近急落して損失が出ている。このようなことは投資をしている限り、よく起こることです。
保有している株が下落し続ける場合は損失を最小限に食い止める必要があります。そのために行うのが損切りです。今回は投資初心者さん、個人投資家の方であれば、必ずマスターしておきたい損切りについてお話します。
早速、解説していきます。
損切りとは何か
損切りとは、損失が出ている株を売って損失を確定させることです。別の言い方では、ロスカットトップスとも言います。逆に利益が出ている株を売って利益を確定させることは利食いと言いますね。
株式投資においては、いかに利益を出すかこのことに意識が行きがちです。儲かる個別株は何か、どのインデックス投資が一番効率的に資産を築けるか。爆益を狙える銘柄は何か、ネットや雑誌の記事などでも、いかに儲かる銘柄を見つけるか、このことに焦点を当てていることが多いですね。
しかし、相場とは上がるときもあれば下がるときもあります。予想とは異なる値動きによって損失が出たとき適切な対応ができるかどうかがとても大事になります。ある銘柄で利益が出ても別の銘柄で大損失を出したら、最終的に手元に利益は残りません。
つまり、株式投資において資産を増やすために重要なのが損切りなのです。でも米国株投資の最適解として紹介されているS&P500インデックス投資は損切りなんて必要ないよね、だって。将来右肩上がりに上昇していくんでしょ?と、このようなツッコミが聞こえてきそうですね。
ズバリ、超長期運用目的のS&P500や全米株式などのインデックス投資には損切りは必要ありません。何十年という長期投資においては右肩上がりということが裏付けられているからです。損切りが必要となるのは、主に個別株や米国インデックス以外のETFや投資信託商品が対象です。
続いて今回のテーマでもある損切りが必要なタイミング7選についてお話します。
①あらかじめ設定した損切り額まで株価が下落したとき
株は購入時の期待に反して下落し続けることがあります。これ以上損失を大きくさせないように損切りをします。例えば一株100ドルである企業の株式を購入します。当初は将来の値上がりを期待していました。
ですが期待に反して株価は下がり100ドルを下回ります。一時100ドル以上に回復しますが、また下がり始めます。このまま下がり続けたら、半値近くまで下がってしまうことを懸念し、80ドルで株を売却、結果購入価格より20%損失を出してしまいました。
しかし、それ以上の損失は食い止めることができました。これが損切りです。一見すると、なんだこんなの簡単じゃんと思われるかもしれません。しかし、この損切りという行為は投資初心者にとって、思ってる以上に難しいとされています。
それは次の二つの理由があります。一つ目は人間の性質に関する理由からです。人間はそもそも損失を避けようとする生き物です。行動経済学の世界はプロスペクト理論というものがあります。これはノーベル経済学賞を受賞したアメリカのダニエルカールカーン氏らによって提唱された理論です。
プロスペクト理論を踏まえると投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応するとされています。投資家は利益が出ると、いつ確定しようかとそわそわします。そして、株価が少しでも下振れすると、思わず利益確定をしてしまいます。
逆に損失が出ると不思議なことに忍耐力が強くなります。購入時より株価が下がってしまっていても、なぜか株価が回復するまで我慢しようとします。しかし、実際のところ株価は回復せず、どんどん落ち続けます。結果的に大きな損失をこうむってしまいます。
つまり投資の世界では、損小利大を狙いたいのに、人間の本能的性質から、利小損大となってしまうことが往々にしてあるということです。
初心者さんが損切りをすることが難しい理由二つ目は、保有効果によるためです。保有効果とは、自分が所有するものに高い価値を感じてばらしたくないと感じる心理現象のことです。
人は一度何かを保有すると手放すことが惜しいと感じます。たとえ保有する株が値下がりし続けても、根拠なく上がると信じて持ち続けてしまうのです。このように人間の心のクセによって損失を確定する損切りが難しいとされています。
では、どうしたら良いのか、答えは以下2つのルールを守ることです。
ルール①:株を購入したときに、買値から何%下がったら損切りすると決める
ルール②:ルール1は徹底的に守る
以上2つです。ルール①の損切りを実行する下落割合ですが、一般的には10%と設定する方が多いようです。しかし、これは皆さんの損失強度や保有株のボラティリティによって変わります。
ですので、皆さんそれぞれの状況に合わせて5%、10%、20%を決めると良いですね。さらに、有無を言わさず損切りを実行する方法として逆指値を入れていくという方法もあります。逆指値とは価格が上昇し、指定した値段以上になれば、買い。価格が指定した値段以下になれば売りとする注文方法です。
通常の指値注文それぞれ指定した価格以下で買い、または指定した価格以上で売りを行います。これとは逆の注文方法であることから、逆指値と呼ばれます。
例えば現物銘柄1250円で購入したとします。1180円で売り逆指値を設定すると株価が1180円に下がったところで注文が執行されます。このような仕組みです。
逆指値ができる証券会社を紹介します。SBI証券、楽天証券、マネックス証券、このような証券会社で逆指値注文が設定できます。逆指値注文を利用すれば、損切り注文を自動で発注してくれます。そうすることで感情や日々のスケジュールに左右されずに損失を限定できます。これが逆指値注文を利用する大きなメリットですね。
ちなみに単純に%で損切りすることはしません。この後お話するストーリーが崩れたとき、前提条件が変わり、下落も大きくなったときに損切りをしますね。
②投資のストーリーが崩れたとき
投資のストーリーが崩れたときも損切りタイミングの一つです。投資のストーリーとは、企業や指数の将来像をイメージするということです。
このストーリーが良いと思えば投資家はその会社の株を買います。投資家はストーリーを考えるために情報収集します。その集めた情報を使いストーリーを組み立てます。
一つ例を挙げます。最近ナスダック100にも組み入れが決まった高級EVメーカールシードモータースへの投資を検討したとしまするルシードは2020年4月に設立。2021年7月に上場、新興のEVメーカーです。上場以来、株価は4倍にもなることがありました。
投資する際、ルシードの製品情報や会社の財務状況、業績などの情報を収集します。こうして集めた情報をもとに、ルシードとは将来生産台数を増加し続ける、販売台数をさらに拡大させる、黒字化を達成する、そのようなストーリーを考えルシードへの投資を決めます。も
し今後ルシードが、量産化につまずき生産台数が予想よりも伸びない。他のEVメーカーとの競争が激化し、販売台数が伸びない、何年経っても黒字化のめどが立たない、このように当初描いていたストーリーが崩れ、株価が損失を抱えていた場合は損切りします。
損切りとはいかなくてもルシード株を売却する判断材料となり得ますね。特にグロース株は需給で株価が膨れ上がっていることが多いです。定量面での裏づけが乏しいのです。そのため懸念材料が出ると株価が大きく下落することがあります。
投資する企業の投資ストーリーが崩れた場合は、投資を見直すきっかけとしましょう。
③決算が連続で良くなかったとき
投資先企業の決算が連続で良くなかったときも損切りを考えるタイミングです。企業は四半期ごとに業績発表をします。企業の四半期業績は企業のホームページにあるIR情報で確認できます。
IRとはインベスターリレーションズの略です。インベスターリレーションズとは、企業が株主や投資家に対して企業自身のことを知ってもらうための活動のことをいいます。
IR情報とは、企業が自ら株主や投資家に向けて発信する企業自身の情報のことです。例えばiPhoneで有名なAppleの業績を見たければ、Google検索ボックスにAppleIRと入力検索すれば、AppleのIRページが見つかります。投資先の四半期業績又は主に次の項目が順調に増えているかを確認します。
①売上高
②営業利益
③EPS
④営業キャッシュフロー
またガイダンスと呼ばれる投資家向けに発表される翌四半期や翌年度の利益予想をチェックすると良いですね。これらの項目を確認し、連続した四半期において売上が伸びなくなった、営業利益が下がったEPSが伸びていない。営業キャッシュフローが鈍化したガイダンスが弱い、このような場合は要注意、継続投資を見直す機会となります。
特にグロース株において売上高が伸びない、ガイダンスが弱い、このような黄色信号が出ると、株価は大きく下げるきっかけとなります。業績不振により、保有株の損失が拡大しそうな場合、損切りを考えるタイミングとなります。
④高配当株に投資したが、減配をしたとき
高配当株が減配となり、株価が大幅下落となったときは損切りのタイミングになります。高配当株は配当利回りが高く、もらえる配当金が大きいことから、多くの投資家に人気ですね。
もし、配当利回りが落ち、配当金が減ることがあれば、株を売却する投資家が増えます。結果として今後期待できる配当収益が減り、保有する株主さんも減少します。
こうなると高配当株に投資する目的がなくなったと言っても過言ではありません。高配当株として人気が高いAT&Tを例にとって見てみましょう。
AT&Tは、アメリカの大手通信メディア企業です。2021年5月、数年前に買収したワーナーメディアのスピンオフを発表すると同時に、当時の配当の約40%から60%減配する可能性を示しました。すると株価は一時期10%安になるほど大きく売られました。
AT&Tが減配の可能性を示唆して以来、配当込みのリターンは減少し続けています。資産が大きく減ってしまっては投資の意義が失われてしまいます。
高配当株が減配をする、また減配の可能性を示唆したときは、株を売却するタイミングの一つになります。
⑤金利高が予想され、さらなる下落が考えられるとき
金利高が予想され、株価のさらなる下落が考えられるとき、このようなとき損切りを考えた方が良いタイミングになりえます。
金利上昇は負債の大きな会社の株価に悪い影響を及ぼす場合があります。金利上昇により企業の借り入れコストが上昇、企業は設備投資を縮小、個人レベルでは住宅購入を見送る人が多くなります。
結果として、企業業績低迷への不安から株価が下落します。金利が下がると株価が上がり、金利が上がると株価は下がる、このようなケースが多いことから、一般に金利と株価シーソーのような関係があると言われていますね。
ただし、一般的には好景気だから金利を上げるわけで、慌てて全て売るようなものでもありません。過熱するインフレを抑制するため、アメリカのFRBは2022年。利上げを実施すると言われています。コロナ禍以降、米国ではインフレが進み、ガソリンや食品などの価格が急上昇、2021年11月、米国の消費者物価指数は前年同月比7%近い伸びとなりました。
これは1982年以来。39年ぶりの大幅な上昇です。このような状況もあり、FRBはテーパリングを加速させ、今後利上げ実施するということを示唆していきます。
金利に影響を受けやすい株を保有されている方は、金利上昇のニュースに注意しましょう。特に高値で株を買ってしまい、下がる株価によって含み損を抱えている。今後も株価が落ち続けるのではと心配でたまらない。
このような方は精神衛生上あまり良くない状態です。損切りを考えてもいいかもしれませんね。
⑥他に上昇している銘柄に投資したいとき
損失を抱えている銘柄を持ち続けるよりも、それを一度売却、そして他の上昇している銘柄に乗り換える方が良いときもあります。機会損失という言葉があります。これは文字通り本来得られるはずの機会を失ったことを言います。
投資で言えば、含み損を抱える銘柄をずっと持ち続ける、これは別の見方をすれば、他の上昇銘柄への投資をすればより利益を得られるはずだったのに、その機会をなくしてしまった状態です。つまり、儲けそこなったということになります。
先ほど述べたように、損失を抱えた銘柄を手放すことはなかなか難しいです。これは意志が弱いとか決断力がないとかそういうことではありません。人間の心理に起因しているからということでしたね。
米国市場には5000以上の銘柄が存在しているとされています。小型株から大型株、ハイテク系からエネルギー関連銘柄まで多種多様です。何千もの銘柄がひしめき合う米国市場、1日の取引の中でも10%以上も値上がりする銘柄もあれば、10%近くも値下がりする銘柄もあります。
一つの銘柄に固執する必要はありません。値下がりし続ける銘柄は早めに損切りをつける、そしてトレンドに乗って上昇する銘柄つまり勝ち馬に乗り換える。このやり方の方が遥かに資金効率が良いです。
例を挙げます。米国テクノロジー企業として代表的な企業にIBMとMicrosoftがあります。IBMとMicrosoft、どちらもクラウドサービス事業を展開する企業として有名ですね。ちなみに同事業において、IBMは業界5位、Microsoftは2位です。どちらもグローバルに活躍するIT企業ですがマイクロソフトと比べて、IBMは近年ハイテク企業というイメージは薄いかもしれませんね。
少し昔の話をすると、1970年代、IBMはコンピューターマーケットにおいて大きなシェアを持っていました。しかし、コンピュータの小型化が進むとIBMはどんどんシェアを失っていきました。1990年代になるとMicrosoftがOSのWindowsを発売、パソコン市場に大きな変革をもたらしました。
それ以降パソコンだけでなくソフトウェアが重要な時代になりました。WordやExcelは当時から現在でも多くの人に用いられているアプリケーションですね。IBMは生き残りをかけて主力事業を、ITコンサルティング事業、IT業務の外部委託、ITソリューションの提供といったビジネスサービスセグメントに特化します。
一方MicrosoftクラウドサービスのAzure、家庭用ゲーム機Xbox、サブスクのOfficeアプリケーションOffice365、ハードウェアの小型PCのSurface、このように幅広い事業を展開。また、各分野において人気の高い製品サービスを提供しています。
直近5年間のIBMとMicrosoftの株価比較です。2017年よりIBMの株価はじりじりと右肩下がり。一方、Microsoftは綺麗な右肩上がりで対照的です。株価は2019年半ばにMicrosoftがIBMを追い抜いています。
現在ではMicrosoftがIBMに対して3倍ほどの株価になっていますね。もし、2017年からIBMの株を持ち続けていたら、投資効率が落ちていましたね。IBMの将来性を見極め、Microsoftに乗り換えることができていたら、値上がりによる利益を享受できたことになります。
もちろん2017年当時、現在のMicrosoftの優勢を予測することは難しかったかもしれません。事業があまり振るわず、徐々に値下がりする企業の株を損切りし、着実に上昇する企業に投資する、これにより投資利益を得るという一つの事例として捉えるといいかもしれませんね。
⑦損益通算をしたいとき
損益通算したい、このようなときにも損切りは有効です。損益通算とは1年間の利益と損失を相殺して利益を減らすことです。通常株式や投資信託などで発生した利益には税金がかかります。
一方、損失が出た場合にはその分利益が減るので、税金を減らすことができます。毎年1月1日から12月末日までの間に、株式や投資信託などの売買を行った際に発生した損益を通算します。
こうすることで既に徴収された税金を取り戻すことができます。もし含み益が出ている銘柄があり、売却し、利益確定したとします。そのままでは利益に対し税金が徴収されます。その年に損失が出ている銘柄がある場合は、損切りすることにより、課税額を減らすことができます。
結果として支払う税金を減らすことができます。損失を出している銘柄があり、当分株価が回復しないと見込まれる、その年に確定したまたは確定させたい利益があるが税金を抑えたい、このような場合に損切りすることは一つの有効な手段となります。
以上、損切りが必要なタイミング7選についてでした。
まとめ
今回のまとめです。今回は損切りとは何か、また損切りが必要なタイミング7選についてお話しました。
①あらかじめ設定された損切り額まで株価が下落したとき
②投資のストーリーが崩れたとき
③決算が連続で良くなかったとき
④高配当株に投資したが、減配をしたとき
⑤金利高が予想され、さらなる下落が考えられるとき
⑥他に上昇している銘柄に投資したいとき
⑦損益通算をしたいとき
繰り返しになりますが、米国インデックス投資を長期積立または購入後長期保有するのであれば損切りは必要ありません。米国市場は長期にわたって成長し続けることが前提だからです。
もし個別株投資やセクターETFなどに投資をされている場合は、今回ご紹介したようなタイミングで損切りを考えることも必要になるかもしれません。投資には最適解はあるが、絶対解はない。百発百中で購入した銘柄が利益をもたらすということはないからです。
しっかりと損失をコントロールしながら健全な投資を目指していきましょう。これからの投資戦略の参考になりましたでしょうか?
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