自己都合退職と会社都合退職
今回は自己都合退職を会社都合退職に変える方法ということで、自己都合退職を会社都合退職に変えて、失業保険の受給条件を良くする方法をお話していきます。
会社を辞めるときの退職理由には、自分の都合で辞める、自己都合退職と会社の都合で辞める、または辞めさせられる会社都合退職があります。会社都合退職の方が失業保険の条件がいいというのは、皆さんもなんとなく知ってるんじゃないでしょうか?実際会社都合退職になると失業保険の給付日数が増えたり、給付制限期間がなくなるっていう優遇措置があるんですね。
でも、会社都合退職になるのは倒産や解雇のときだけでしょって思ってる人も多いんじゃないでしょうか?また自己都合退職で処理するって会社から言われたしって、本当は会社都合退職にしたいのに、会社から言われて仕方なしに自己都合退職にしている人がいるかもしれません。でもそうやって諦めるのは間違いなんですよ。実は自己都合退職でも、理由によっては会社都合退職に変えられるし、会社都合退職と同程度の優遇措置を受けられるんです。
そのためには、特定受給資格者が特定理由離職者、このどちらかになることが必要です。じゃあどうすればこの特定受給資格者や特定理由離職者になれるのか。そこがわかれば、自己都合退職を会社都合退職にすることが可能なんですね。これは自己都合退職として処理されてしまった人でも、後から覆すことが可能ですので、そのやり方を解説していきます。自己都合退職にされてしまってモヤモヤしてるっていう人は会社都合に変えれるかもしれませんので、ぜひ最後まで見てください。
特定受給資格者と特定理由離職者とは?
まずはこの失業保険で優遇措置がある特定受給資格者、特定理由離職者とは何なのか、どういう人が対象になるのかを説明していきます。
そして、特定受給資格者特定理由離職者になると、どんなメリット、優遇措置があるのかをお話します。それを踏まえた上で、自己都合退職を会社都合退職に変えるにはどうすればいいのか、それをお話していきますね。
ではまずは、特定受給資格者特定理由離職者とは何なのか、その条件や対象者を見ていきます。
まずは失業者の3区分ということで、失業した人は退職した理由によって、
①一般離職者
②特定受給資格者
③特定理由離職者
の三つにわかれます。
①一般離職者:一般的な自己都合退職者のことですね。普通にただ辞めるだけだと、この一般離職者になります。
②特定受給資格者:倒産や解雇による会社都合退職者のことです一般的に会社都合退職と呼ばれるものですね。
③特定理由離職者:特定受給資格者には該当しないけど、やむを得ない理由で退職した自己都合退職者のことです。会社都合退職と自己都合退職の間にあるような人がこの特定理由離職者に当てはまるんですね。
そして特定受給資格者と特定理由離職者には失業保険における優遇措置があります。
特定受給資格者になる対象者
特定受給資格者とは、倒産解雇に準ずる理由で離職した人のことです。これに当てはまると会社都合退職になります。ではその特定受給資格者の対象者を見ていきますけど、これが結構たくさんあります。
【特定受給資格者の対象者】
・会社が倒産した
・会社から大量の離職者が出た ※人数の基準あり
・事業所が廃止になった
・支店が閉鎖になった
・事業所が移転し、通勤が困難になった
・解雇された ※懲戒解雇を除く
・労働条件が契約と大きく違っていた
・賃金の3分の1以上が期日までに支払われなかった
・賃金が85%未満に低下した給料を下げられた
・残業時間が3ヶ月連続で45時間あった
・残業時間が1ヶ月で100時間あった
・残業時間が2ヶ月の平均が月80時間あった
・妊娠出産介護の制度利用を拒まれた、もしくは利用したことで不利益があった
・常識的な配慮を行わず配置転換された
・3年以上の有期労働契約が更新されなかった
・更新される前提の有期労働契約が更新されなかった
・セクハラパワハラを受けた
・退職勧奨を受けた
・事業者による休業が3ヶ月続いた
・事業者が法令に違反していた
これだけ特定受給資格者の対象範囲って広いわけです。なので、多くの理由が会社都合退職に該当するんですよ。3ヶ月連続で月45時間を超える残業だと、それを理由で退職した場合は会社都合退職にできますんで、これ知っておいてください。そしてセクハラやパワハラですね。
上司のパワハラが原因で辞めるっていう人結構多いと思います。これも会社都合退職に該当しますんで、知っておきましょう。
特定理由離職者になる対象者
次に特定理由離職者の方を見ていきます。こちらは特定受給資格者には該当していないけど、やむを得ない理由で退職した人が対象です。会社都合か自己都合か曖昧な人がこれに当てはまります。
特定理由離職者になると会社都合退職と同程度の優遇措置が受けられるんです。特定理由離職者の対象者を見ていきましょう。これもたくさんあるんですよ。
【特定受給資格者の対象者】
・雇止めで有期労働契約が更新されなかった
・正当な理由による自己都合退職 ※体力の不足、心身の障害
・妊娠出産育児により離職し、受給期間延長措置を受けた失業保険の受給期間を延ばした場合
・家族の看護、介護など家庭の事情の急変
・家族との別居生活、単身赴任などが困難になった
・結婚、育児、事業所の移転などにより、通勤が困難になった
・希望退職者の募集に応じた
このように多くの理由が特定理由離職者に当てはまるわけです。というわけで特定理由離職者も特定受給資格者と同じように対象の範囲が広いんですよ。だからこれも、多くの理由が該当するんです。例えば先ほどもお話しましたけど、うつや精神疾患が原因で辞めた場合、これは特定理由離職者になります。そして介護離職、家族の介護をしなきゃいけないのでやめた場合、これも特定理由離職者になるんですね。なので特定受給資格者特定理由離職者には多くのケースが該当するんだというのを知っておきましょう。
特定受給資格者と特定理由離職者のメリット
最初にお話した通り、失業者は3種類に区分されます。特定受給資格者と特定理由離職者、そして一般離職者ですね。特定受給資格者と特定理由離職者には失業保険における優遇措置があるわけです。
どんな優遇措置があるかを見ていくんですけど、まず先に一般離職者は優遇措置がありません。もちろん一般職者は自己都合退職として扱われて、そして失業保険をもらうまでに2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間というのがあります。そして給付日数の増加もありません。特定受給資格者は会社都合退職とみなされて、一般離職者にある給付制限期間がありません。さらに、失業保険の給付日数が増えます。これは特定理由離職者の中の雇いどめに該当する人も同じで、この場合は会社都合退職とみなされて、給付制限期間はありませんし、失業保険の給付日数も増えます。おおまかには以下の表となります。
会社都合退職(特定受給資格者と特定理由離職者を含む) | 自己都合退職(特定理由離職者の場合を除く) | |
支給日(給付制限期間) | 7日経過後 | 2~3ヶ月+7日経過後 |
受給要件 | 退職以前1年間で被保険者期間が6ヶ月以上 | 退職以前2年間で被保険者期間が12ヶ月以上 |
給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
給付金額(最大) | 約275万円 | 約125万円 |
この給付制限期間がなくなるっていうのと、給付日数が増える、それがどれぐらいのメリットなのかを説明します。まず失業保険の給付制限期間についてですけど、自己都合退職で辞めた場合一般離職者の場合ですね、この場合は失業保険をもらうために、まず待機期間っていう7日間があるんですけど、その後に給付制限期間っていうのが2ヶ月、もしくは3ヶ月つきます。2ヶ月か3ヶ月になるかは、その条件によって違うんですけど、ほとんどの人は2ヶ月の給付制限期間がつくことになっています。この間は失業保険がもらえずに、その給付制限期間が終わってから失業保険が受給できるんですね。だから自己都合退職だと失業保険をもらうまでにかなり長い時間がかかるわけです。それに対して、会社都合退職の場合は待機期間の7日間が終わればすぐに失業保険の受給が始まります。この給付制限期間が、特定受給資格者と特定理由離職者はないわけです。
退職理由 | 年齢 | 被保険者であった期間 | ||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | ||
会社都合 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
自己都合 | 65歳未満 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
次に失業保険の給付日数の優遇措置も見ていきましょう。はいこちら自己都合退職者の所定給付日数はこのように、雇用保険の加入期間に応じて90日120日150日となっています。これが先ほどお話した通り、特定受給資格者と雇いどめによる特定理由離職者の場合は、所定給付日数が下のように変わるんですね。例えば自己都合退職だと、雇用保険加入期間が10年以上20年未満だと120日ですけど、優遇措置が受けられれば、このように最大で270日まで受けられます。この給付日数一番長いのだと330日まで受けられますんでね、会社都合になったらかなりもらえる失業保険が多くなるっていうのはわかるんじゃないでしょうか?ただこの失業保険の給付日数が増えるのは、特定受給資格者と雇止めによる特定理由離職者のみになります。
特定理由離職者のうちの正当な理由による自己都合退職にあたる人は給付制限期間はなくなりますけど、失業保険の給付日数は増加はしないんですね。それでも給付制限期間がなくなるっていうのは大きいですからね。該当するか調べてみる価値はあると思います。それに他にも特定受給資格者と特定理由離職者には国民健康保険料、住民税の減免制度を設けている自治体があるんです。
国民健康保険料と住民税が減免できればかなり大きいですからね。失業してるときの負担がとても軽くなりますから、だから特定受給資格者や特定理由離職者に当てはまるんであれば、絶対そっちに変更しておいた方が得なわけです。
自己都合退職を会社都合退職にするにはどうすればいいかをお話していきます。
これまでお話した通り、会社都合退職に変えるっていうのは、要は特定受給資格者と特定理由離職者このどちらかになることを指します。
どちらかに当てはめれば、失業保険の優遇措置が受けられますので、これに該当するかを確認しましょう。該当しそうであれば、まず退職時に会社に確認するんです。
退職する理由は、こうこうこうなんですけど、これは特定理由離職者に当てはまりますよねと、会社側に主張するんですね。これをまずやってください。でないと会社は勝手に自己都合退職で処理してしまうんですよ。
本当これは自分の正当な権利ですからね、ちゃんと主張することが大事です。とはいえ、会社都合にしてほしいと言っても会社がしてくれなかったり、また自己都合だと思い込んでそのまま退職してしまった、そういう人も結構いると思います。
そういう場合でも遅くありません。ハローワークに相談しましょう。特定受給資格者や特定理由離職者に該当するかは会社の判断や自分の判断で決まるんではないんです。これはハローワークの判断で決まるんですよ。だからハローワークに言えば会社の判断を覆すことも可能なんです。
そのためにはいろいろ提出書類があったり、ちょっと面倒なところはあるんですけど、それでも会社都合になるメリットは大きいですから、一度掛け合ってみる価値はあると思います。
というわけで、会社に無理やり自己都合退職にさせられてしまったりとか、なんとなく自己都合退職で処理してしまったけど、本当は会社都合なんじゃないかなってモヤモヤしてる人は、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。
以上、最後まで読んで頂きましてありがとうございました。